だいばーしてぃー

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谷口峻路です。自営業で主にドラマー・ドラム講師・リトミック講師・放課後等デイサービス指導員をしております。プログラミングを独学で習得し、コーディングの仕事を探しております。旅もしております。

障がい者を監禁して捕まる父親・監禁しないで入院した将裕さん

 

 兵庫県三田市で発生した障がい者を監禁した事件

 

 

今年4月に発覚した障がいを持つ子どもをオリの中に監禁していた事件です。

 

事件の概要

障がいを持つ長男(監禁された当事者)は、13歳になった頃から家族に噛みついたり大声をあげたり暴れたりするようになった。

近所にも迷惑をかけ、外出も難しい状態になり、家族への危害も心配になった父親がオリを作りその中に長男を約25年間監禁するようになったとのこと。(2日に1回12時間ほど出てはいたらしいです)

 

その後父親の心境などを取材した番組がアップされていました

www.youtube.com

 

動画前半では父親が『監禁に至った事情を知ってほしい』と取材に応じている様子が流れます。

 

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やみくもに監禁したわけではなさそうですね。

家族に危害を加えるようになってからは、心配で仕事へ行くのも辛くなったとのこと。

一時的に預けてもらえる施設を探しても、空きがなかったようです(25年間あれば空きがある時期もあったのでは?という疑問もありましたが)

 

 

 暴れる障がい者に対する解決策は何か

 

発達障がいを持つ人の割合は圧倒的に男子が多く、当然成長すると母親はもちろん父親よりも力がつくこともあり、暴れだすと止めるのが難しくなるのは明らかです。

僕は放課後等デイサービスの指導員でもあり、リトミックで色々なデイサービス施設に行っているため、毎月何十人もの発達障がいをもつ子ども達と接していますが、子どもが暴れだしたり暴力を振るい大変な状況になる現場は何度も見ています。

 

しかし、その場合取られる対応は

 

①暴力を受けない程度に離れ、落ち着くまで様子をみる。(やさしく声をかける)

②それでも収まらず、人や物にあたるようであれば、やむを得ず力ずくで抑える。

 

がほとんどです。

結果同じ行動は何度も繰り返され、根本的な解決にはなっていません。

放課後等デイサービスなどは時間が限られているので、まだ職員側の『我慢』が通用するかもしれませんが、一緒に暮らす家族ともなると精神的にとても辛くなるのは明らかですね。

 

同じように暴れたり暴力を振るう障がい者がいる家族の意見を引用して紹介します。

 

「母が解離性同一性障害(多重人格)です。父が殴られているのを私が制止すると今度は私が殴られ、私が殴られているのを父が制止すると今度は父が殴られるので、母の暴力を止めることができませんでした。親戚からは『あなたがお母さんをどうにかしなさい』と言われていたため、頼れる人はいませんでした。監禁は許されないことですが、三田市の父親の気持ちは痛いほど分かる。ので、私はその父親を責められないです。」(まわたさん 40代・母が精神障害

精神障害者と家族 三田市の監禁事件から考える - 記事 | NHK ハートネットより引用

 

うちにも重度な知的障害の子がいます。
噛んだり、髪をひつぱったりしてしまうのも、わがこだから許せますが、兄弟たちには苦痛でしかないですよね。
兄弟たちにも生活や人権があるので守らなくてはいけないし、実際そういう施設は数少なく空きがないのが現状でもあります。
うちは家中鍵と、ベビーゲートだらけです。それは外に出てしまい事故にあわない、キッチン、水回りでの事故を予防するための対策です。
それも軟禁になるといわれてしまえばそこまでですが、自分がトイレにいく数分目を話せばその子本人が怪我をしてしまったりと命とりになります。
我が子を守るための拘束もあるのではないでしょうか。とわたしは思います。
ままならない理由でデイにお泊まりお願いした時には夜いなくならないようにおっきなおりのなかで布団をひいて寝せることを了承する、書類を必ずかかされます。
かわいそうですが、我が子を危険から守るためにはしょうがないと自分にいいきかせながら毎回書いてます。

https://www.facebook.com/NHKgendai/より番組コメントから引用(一部省略)

 

 

 家族として正しいのは?

 

監禁した父親は、施設に空きがないことが理由で結果的に息子をオリの中に入れることで家族の生活を維持しました。

障がいを持つ家族に対して『正しかった行動』とは言えませんが、他の家族を巻き添えにしなかった事を父親は主張しています。

 

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このセリフを聞いてとっさにトロッコ問題 - Wikipediaを思い出してしまいました。

 

                                       

 

番組後半では障がい者を支える家族が結果的に"共倒れ”をしてしまったケースについて紹介されています。

 

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愛知県豊田市 自閉症の弟(27歳)と暮らす将裕さん

 

弟は知的障がいと自閉症があり、他人と会話することはほとんどできません。

母親が家出・父親が病死し兄弟二人で暮らすことになり、その頃から弟が暴れて手が付けられなくなったとのこと。

 

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床や天井・家の物を壊し続ける。外出して問題を起こし、保護されたときはその度に将裕さんが謝ることに。

 

将裕さんは二年前、豊田市に相談を持ち掛けていましたが、連絡がなかった。

番組の協力で市の職員と連絡を取ることができ、弟のことを相談したが結局施設に入れてもらえなかった。

その数か月後、将裕さんはうつ病により入院してしまうことに。

将裕さんが入院したことで初めて豊田市は動き出し、弟の施設入所を行った。

 

将裕さんがうつ病で倒れてから行動をとる豊田市の対応は明らかに遅いので、論じるまでもないですが、注目したのは途中で将裕さんの言葉

 

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弟を施設に預けて、別々の生活を望む将裕さん

 

 

 監禁まではいかなくとも、軟禁するのが最善策になってしまう

 

・オリを作って監禁したことにより、他の家族5人の生活は維持できた父親

・監禁はしないが物を壊す・外で問題を起こし続けられるストレスで倒れた将裕さん

 

どちらも施設に預けたくても預けられないことが原因で発生した問題だと思います。

動画の中でも福祉施設の紹介や解決策は紹介されていますが、引用コメントや2つの事例を見ても事実上機能しきれていないのが現状です。

 

この状況下においては、暴れて手が付けられない障がい者は人権侵害にならない程度に軟禁させ、一緒に住む家族の行動も制限するのが最善策になってしまいます。

これでは結局どちらも不幸に向かってしまう気がします。

 

もちろん障がいを持つ当事者の考え方もあるので、やみくもにはいきません。

物を壊すのであれば、壊しやすいものをできるだけ家に置かないなどの対策も可能ですが、それでは防ぎきれないからこそ事件が発生しているのです。

 

 

この件に関しては色々な意見を聞いてみたいと思います。

気づいたことがありましたら、コメントをいただけると幸いです。

 

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