名古屋|音楽を仕事にする方法について|インディーズミュージシャンの演奏業がデフレ化する理由
2014年の秋頃、僕は9バンド(ソロ含む)のサポート演奏をしておりました。
理由は単純で、音楽の仕事をしたかったからです。
当時高校生だったミュージシャン以外からは基本ギャランティーとしてお金をもらっていましたが、正味全然利益は生めていませんでした。
今回はサポート演奏が仕事としてほとんど成立しない点について論じていこうと思います。
サポートミュージシャン側の問題点
実は演奏するミュージシャン側にも問題あるんじゃないかなぁ〜とか思ったりします。(まぁ23〜4歳の頃の僕も多少やってしまってはいたのですが。。。)
基本的にほぼボランティアで請け負う人の人口が高すぎるという点です。
価格競争の基本ですが、おおよそ同じ演奏レベルの人が何人かいたら、よっぽど性格に問題がない限り一番安い人に依頼するのがお金を出す側の心理です。
『付き合いが長いから』『友達だから』という理由で、ほぼタダで請け負っている人がざらにいますが、同じ業界で仕事にしようとしている人の迷惑になっている可能性は否めません。
移民を大量に入れて外国人労働者を増やしている昨今ですが、彼らが来ることで日本の平均賃金は基本下がる方向へ向かいます。
なぜなら時給が低くても『やります!』と挙手するから、その価格がスタンダードになるわけです。
それとほぼ同様な現象がサポートミュージシャンで発生しているのが現状だと思います。
演奏依頼する側の問題点
続いて依頼するミュージシャン側の問題点について
サポート演奏を依頼する側は基本ソロミュージシャンが多いので、今回はソロの場合を仮定して論じていきます。(バンド内でパート1つサポートミュージシャンのパターンもありますが)
僕の身の回りを観察していると、イベントごとでソロミュージシャンがバックバンドつけて出演する光景をSNSなどでよく目の当たりにしますが、
ワンマンライブなどでそれなりに集客・収入の得られるイベント以外でバックバンドつけるのはデフレ化を招いているなぁ〜なんて思ったりします。
理由は単純で、ブッキングイベントの内容に合わせてバックバンドつけている時点で、さほど集客できないためバックミュージシャンにギャランティーが払えないからです。
〜コストの計算〜
仮にバックミュージシャン一人につき¥5,000(交通費別)のギャランティーを払ったとしましょう。人数はギター・ベース・ドラムの3人とします。
スタジオ練習は2時間/2回を仮定します。
すると、スタジオ代は1時間につき¥2,000とすると2時間で約¥4,000かかるため、2回で¥8,000になります。
交通費は自分も入れるので、1人あたり1回¥600と仮定し、
(¥600×4人=¥2,400)× 2回 = ¥4,800
この時点で¥8,000+¥4,800 = ¥12,800
続いて、ライブハウスのイベントでノルマが¥15,000かかったとします。
交通費は当日もかかるので、ここでも¥2,400が加算されます。
さらに、一人当たりギャランティー¥5,000支払った場合、¥5,000×3 = ¥15,000かかります。
つまり当日は
ライブハウスノルマ = ¥15,000
交通費 = ¥2,400
ギャランティー = ¥15,000
合計¥32,400
かかる計算になります。
スタジオ練習と合わせると、¥12,800 + ¥32,400 = ¥45,200 になります。高っ!!
これを集客だけで回収する場合何人呼べば良いのでしょうか?
チケット¥1,500を11人目からハーフバック(¥750)と仮定して計算してみましょう。
とりあえず先ほどの¥45,200から¥15,000を引いて、¥30,200
ここから計算すれば良いですね。
¥30,200÷750 = 40.26
つまり、最初の10枚を足して51枚目が売れた時点でようやく黒字化です。
ブッキングでこの人数呼べるインディーズミュージシャンを僕はみた事がありません。
やっぱり基本ワンマン以外でギャランティー請求するのは難しそうですね。
この条件を考えると、ブッキングライブでサポートミュージシャンをつけてライブをする場合、無料で演奏してくれる人を付けたくなる気持ちはわからないでもないです。
サポートミュージシャン側もブラック労働
もう既に無理ゲー感ありますが、仮に¥5,000もらえたとして時給でいくらになるか考えてみたいと思います。
スタジオ練習で4時間・演奏&リハで約1時間なので、この時点で5時間
曲の復習を全くしないでも大丈夫な優秀なミュージシャンだとしても、どれだけ頑張っても時給換算で¥1,000になります。
残念ながら日本語カタコトで栄のコンビニでバイトしている外国人労働者の時給の方が高いです。
さらに、考え方によっては拘束されている時間は本来他の仕事ができたであろう機会損失なのでこれも入れてみましょう
ライブハウスの場合だいたい15時前後から21時前後まで拘束される事が予測されます。
この場合、リハと本番が込みなので総拘束時間は仮に6時間としましょう。
4時間のスタジオと合わせて10時間になりますので、時給が単純計算で500円になります。
せっかく頑張ってたくさん練習して得られた技術を、たった時給500円という値段で安売りするのは如何なものかと思ってしまいます。
基本単価が上がることは期待できない
ここまで綴った話を元に、インディーズミュージシャンの演奏業がデフレ化しない条件を考えてみました。
①サポート演奏を無料で行う人を、基本有料にするよう一人一人説得して回る
②サポートを依頼する側の人に対しても、黒字化(もしくはトントン)集客が見込めるライブ以外サポートをつけないよう説得する
③町中のライブハウスの基本出演単価が一気に下がる
この辺りが考えられます。が、こんなことやっている暇があったら別のスキル伸ばした方が身のためになりそうです。
どうやら基本単価が上がることはなさそうですね。
以上、インディーズミュージシャンの演奏業デフレ化についての記事でした。
音楽を仕事にしたい方の参考になっていただければ幸いです。
谷口 峻路